フィニアス・ニューボーン Jr(Phineas Newborn, Jr.):メジャーになりきれなかった天才
ジャズシーンにおけるゴッホ
今では誰もが彼を天才と呼ぶ
フィニアス・ニューボーン Jr(Phineas Newborn, Jr.)は「不遇の天才」と言われています。死後認められたという点でゴッホになぞらえることが出来ますが、そのこと以上にゴッホと類似している点があります。生前認められないという焦燥感から精神に異常をきたしたということが悲しい類似点なのです。
引用元:http://phineasnewbornjr.org/
初リーダーアルバム
フィニアス・ニューボーン Jrは、ブルース・ミュージシャンとしてスタートします。彼の父が率いるブルースバンドに弟でギタリストのカルヴィン・ニューボーン(Calvin Newborn)とともに参加し、B.B.キングのデビューアルバムにも加わっています。その後、父のバンドを離れ、1956年に初リーダーアルバム「Here Is Phineas」をリリースします。そのアルバムから「Daahoud」と「Newport Blues」をお聴きください。
参加メンバーは以下の通りです。
Phineas Newborn, Jr. - piano
Calvin Newborn - guitar (tracks 1, 2, 5 & 8)
Oscar Pettiford - bass (tracks 1, 2, 4, 5, 7 & 8)
Kenny Clarke - drums (tracks 1, 2, 4, 5, 7 & 8)
初期の栄光
彼の出現はジャズ界の新たな天才プレイヤーの出現として注目されました。ストックホルムやローマにも演奏ツアーに出かけ順風満帆のスタートでした。その頃ロイ・ヘインズ(Roy Haynes)、ポール・チェンバース(Paul Chambers)と傑作「We Three」に参加します(ポール・チェンバースの項を参照)。
1961年には「A World of Piano!」をコンテンポラリーよりリリースします。このアルバムはフィニアス・ニューボーン Jrの代表作というばかりでなくコンテンポラリー・レーベルの代表作の一枚でもあります。このアルバムより「Oleo」と「Juicy Lucy」の二曲をお聴きください。
A WORLD OF PIANO ! ア・ワールド・オブ・ピアノ [12" Analog LP Record]
- アーティスト: PHINEAS NEWBORN JR. フィニアス・ニューボーン・ジュニア
- 出版社/メーカー: ワーナーパイオニア
- 発売日: 1974
- メディア: LP Record
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メンバーは下記の通りです。
Phineas Newborn, Jr. - piano
Paul Chambers (tracks 1-4), Sam Jones (tracks 5-8) - bass
Philly Joe Jones (tracks 1-4), Louis Hayes (tracks 5-8) - drums
貧困の中での終末
ジャズ界の新たなスターとして好調だったフィニアス・ニューボーン Jrが、何故か批評家達のバッシングにさらされることになります。このことについて「批判された」というような表現を見ることはあっても、その内容について詳しく語っているものを見たことはありません。何故バッシングされたのでしょうか?一説には彼が自分のテクニックを鼻にかけ、不遜な態度をとったとも言われていますが詳細は不明です。また、その頃ピアニストの命とも言える手に怪我を負ったとも言われています。そのようなことが原因だったかどうか、精神にも支障をきたしてきました。1960年代の中頃からは活動も断続的になり、加えてアルコールにも溺れ、アル中に陥ってしまいます。断続的な活動を続けはしますが、かつての華々しさは影をひそめ、また演奏も精彩を欠き、1989年に貧困の中で亡くなることになります。どこでどう間違ったのか?順調にいけば、間違いなくジャズ界の巨匠として名を残すことになったはずの彼が、メジャーになりきれず悲劇的な結末に終わってしまったことはまことに悲しいことです。
今でも、ジェフリー・キーザーなどは、彼をリスペクトしていると語っていますし、間違いなく一瞬でも輝いたジャズ界の天才として名を残していることがわずかな救いであるのかもしれません。
最後に、断続的に活動していた時代に発表したソロ・アルバム「Solo Piano」から「Serenade in Blue/Where Is the Love」と「Nica's Dream」をお聴きください。