ニールス・ペデルセン(Niels-Henning Ørsted Pedersen):ベースの音が変わった
ベースをフロントに出しちゃった
聴いたことのない音
ニールス・ペデルセン(Niels-Henning Ørsted Pedersen)に出会ったのもジャケ買いしたレコードでした。学生時代、いつものようにレコードを漁っていると、輸入盤の中に見慣れないジャケットのレコードを見つけました。真っ黒のジャケットの中心に黒人の女性の顔写真が小さく置かれているというシンプルだけど印象的なジャケットでした。
タイトルは「Dark Beauty」で、タイトル文字も小さく細い書体で記されています。ピアノトリオのアルバムで、ピアノはケニー・ドリュー(Kenny Drew)。名前は知っていましたが地味な印象でしかありませんでした。気になったのでジャケ買いしました。家に持ち帰りさっそく聴いてみてびっくり、鮮烈でパワフルな演奏に圧倒されました。ピアノも良かったのですが、ベースの音にびっくりしました。それまで聴いてきたベースの音と全然違いました。ペデルセンとの初の出会いでした。
引用元:http://fotografiadejazz-javiernombela.blogspot.jp/
Dark Beauty
では、私がペデルセンに出会うきっかけとなった「Dark Beauty」から「Run Away」と「It could Happen to You」をお聴きください。
- アーティスト: ケニー・ドリュー,ニールス・ペデルセン,アルバート・ヒース
- 出版社/メーカー: ビデオアーツ・ミュージック
- 発売日: 2002/11/02
- メディア: CD
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「Ø」の発音
ペデルセンの名前の「Ørsted」はどう発音したらいいんだ?と当時話題になりました。当時から今まで、この読みを日本語表記にする場合「エルステッド」と「オルステッド」と二通りの表記があります。今でも統一されていません。若干「エルステッド」の方が多いように思いますが。聞くところによると「お」の口をして「え」と発音するというようなことでしたが今だによくわかりません。
Steeplechase
その見慣れない文字はデンマーク語特有の文字だということです。つまりペデルセンはデンマーク人なのです。
上記の「Dark Beauty」は「スティープルチェイス(Steeplechase)」というレーベルからリリースされましたが、このスティープルチェイスはデンマークの会社です。つまりデンマーク人であるペデルセンがデンマークのレーベルで仕事をしたという、極めて当たり前のことなんですが、ペデルセンがスティープルチェイスで仕事をすることによって、両者にとって非常にプラスに働いたように思われます。スティープルチェイスは「ヨーロッパのブルーノート」と呼ばれたように、非常に音にこだわりました。また、ペデルセンは、ベースのピックアップマイクも独自で工夫をこらすなど、非常に音にはこだわっていました。これは想像ですが、録音に関してペデルセンもかなり関与していたんじゃないかと思っています。「Dark Beauty」はスティープルチェイスの16枚目のアルバムで、スティープルチェイスの立ち上げからペデルセンは深く関わっていたと思われます。この頃のスティープルチェイスからリリースされたアルバムの多くでペデルセンがベースを担当していました。スティープルチェイスのアルバムでペデルセンは一気に人気が出て、そのペデルセン人気がスティープルチェイスの人気も高めたという相乗効果がありました。そんなスティープルチェイス盤からもう一枚、スペインの盲目のピアニストテテ・モントリュー(Tete Montoliu)のアルバム「Tete a Tete」から「We'll be Together Again」と「Lush Life」の二曲をお聴きください。
突然の死
ペデルセンはデンマークの音楽界が輩出した英雄です。デンマークの民族音楽の解釈研究にも多大な貢献をしました。そんな彼でしたが、2005年、58歳というまだまだこれからという時に突然この世を去りました。世界中のジャズミュージシャンに慕われ尊敬されていただけにジャズ界は大きな悲しみに包まれました。彼の死後、2007年に追悼の意味も込めてリリースされた、「The Unforgettable NHOP Trio Live」から「The Song is You」と「My Little Suede Shoes」をお聴きください。
Unforgettable Nhop Trio Live (Dig)
- アーティスト: Niels-Henning Orsted Pedersen
- 出版社/メーカー: Act Music + Vision
- 発売日: 2007/09/04
- メディア: CD
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次回はケニー・ドリューです。