バド・パウエル(Bud Powell):モダン・ジャズピアノの祖
その人生は、あまりにも悲しい結末
ジャズは彼から始まった
バド・パウエル(Bud Powell)は1924年にニューヨークに生まれました。音楽一家で、トランペット奏者の兄のバンドでピアノを弾くようになったのは15歳の頃でした。当時はアート・テイタム(Art Tatum)、アール・ハインズ(Earl Hines)などから影響を受けたと言われています。また、後の演奏スタイルは異なっていますが、セロニアス・モンク(Thelonious Monk)とは深い親交があり、音楽理論はモンクから教わったという話が残っています。チャーリー・パーカー(Charlie Parker)、ディジー・ガレスピー(Dizzy Gillespie)らによって確立されたビバップというスタイルはバド・パウエルの存在によって現在のジャズスタイルが確立されたと言っていいでしょう。ピアノトリオというスタイルはバド・パウエルによって創始されたと言われています。
引用元:https://www.youtube.com/watch?v=73BrOBpxhtY
調子の波が激しい
私が初めてバド・パウエルのアルバムとして手に入れたのは「Swingin' with Bud」でした。1957年にRCAからリリースされたアルバムです。とりあえずそのアルバムから「Another Dozen」と「Oblivion」をお聴きください。
私自身はこのアルバムがお気に入りです。しかし、評論家さんたちにはあまり評判がよくないみたいで、評価はあまり高くないようですね。時期的にはバド・パウエルの調子がよくない時期の録音ということで、「その時期にしては頑張ってるね」的な論評が多いような気がします。そうかもしれないけど、いや、きっとそうなんでしょうけど、唸りながら一生懸命弾いている姿が目に浮かぶようで、気に入ってます。
というようにバド・パウエルという人は調子の波が激しいということで、その原因はやっぱり「クスリ」だったそうです。それに加えて統合失調症を患っていたという話もあります。では、絶好調の録音ってどれなのよ?ってことですが、以前ジャズの店をやっていた時に一番リクエストが多かったのは「Jazz Giant」でしたからこのアルバムあたりが絶好調なんでしょうか?個人的には聴いていてあまりおもしろくないんですけどね。確かに流暢に弾きまくってる感はありますが。このアルバムから「Celia」と「Get Happy」をお聴きください。
- アーティスト: バド・パウエル,カーリー・ラッセル,レイ・ブラウン,マックス・ローチ
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
- 発売日: 2014/10/08
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麻薬からは抜け出たが
バド・パウエルは1959年にパリに渡ります。この頃、アメリカよりヨーロッパの方が稼げるということで、多くのジャズ・ミュージシャンがヨーロッパに渡りました。
パリでの生活は環境の変化もあってバドにとっては良好なものでした。ジャズを演奏する場や観客もアメリカに比べて彼に対して好意的で、精神的にも安定した生活が送れるようになったといいます。その結果、長年の悪癖であった麻薬からも徐々に抜け出すことが出来たようです。しかし、時すでに遅く、彼の身体はボロボロに傷んでいたと思われます。1966年に帰国し、ニューヨークの病院に入院、ほどなく死去します。結核、栄養失調、アルコール中毒が死因といいますが、死因としてこういう表現が出てくるほどボロ雑巾のような身体になっていたということですね。
彼の最後のスタジオ録音「Bud Powell in Paris」から「Dear Old Stockholm」と「Parisian Thoroughfare」をお聴きください。
絶好調の頃に比べればどことなく精神的に安定しているなと思わせます。
次回はセロニアス・モンクです。